【現役研修講師コラム】接客力打開の最前線 第一回「接客指導で重要な【事前期待】の理解

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講師ご紹介
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株式会社 チェッカーサポート CS部 講師 台信 好美 だいのぶ よしみ |
| 小売業向けのレジ部門に在籍し、店舗のレジ運営管理・スタッフ育成を行う。その後、チェッカーサポートに入社。複数店舗のマネジメントを担当し、レジ運営管理・スタッフ育成を行う。主に小売業の接客教育担当者へ研修を実施。従業員の自主性及びコミュニケーションカ向上を目的とした研修を得意とる。 2010年チェッカー技能検定1級取得。 株式会社CGCジャパンのチェッカーフェスティバル審査員経験あり。 接遇マナーインストラクター取得。 |
接客研修を行う際、私はまずリーダーや受講者の皆さんにこう問いかけます。
「接客のやり方、つまり所作だけを教えていませんか?」
お辞儀の角度、美しい敬語、完璧な身のこなしなど、やり方を教えることは、決して間違いではありません。しかし、やり方だけを教え込まれた現場では先々に問題が起こり始めます。
それは、スタッフが自分で考えなくなるということです。
思考をしなくなったスタッフは、マニュアル通りの場面では完璧にできます。しかし少しでも想定外の事態が起きた瞬間、応用が利かなくなり、立ち尽くしてしまいます。私は研修を通じ、自分で考え、自ら行動できる人を増やすことを最大の目的としています。
だからこそ、技術論に入る前に必ず接客のあり方(考え方)を整理することから始めます。
現場で迷子にならないための確かな軸とも言えるでしょう。その根幹となるのが今回お話しする事前期待という考え方です。

1. サービスの本質は「期待」との対話にある
マーケティングの世界には、セオドア・レビット博士による有名な格言があります。
「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」
顧客が求めているのは商品そのものではなく、それによって得られる「結果(ベネフィット)」であるという本質を突いた言葉です。
これを接客に置き換えれば、お客様が求めているのは丁寧な挨拶や完璧なお辞儀そのものではなく、それによって得られる「大切に扱われている実感」や「スムーズな買い物体験」という「穴(=期待する結果)」なのです。
顧客が何を価値とし、何を求めているのか?というマーケティングの視点こそが、私が日々皆さんにお伝えしている「事前期待」の正体です。
需要は、店側が提供したい手順にあるのではなく、常にお客様の期待の中に眠っています。
お客様がサービスを受けた後に感じる「実感」が、サービスを受ける前に抱いていた「事前期待」を上回ったとき、初めて満足が生まれます。逆に言えば、どれほど一生懸命に接客をしても、お客様が心の中で描いていたハードル(事前期待)に届かなければ、それは「不満足」に終わります。
だからこそ、プロとしてまずこの正体を正しく理解する必要があります。
2. 事前期待を形作る「3つの源泉」
期待値を超えるサービスを提供するためには、まずその期待がどこから来ているのかを知らなければなりません。私は研修において、主に以下の3つの要素を詳しく解説しています。
① 過去の経験(個人的な価値観)
お客様がこれまでの人生で受けてきたサービスの蓄積です。
「以前行ったあの店はこうだった」「普通、このレベルの店ならこれくらいはしてくれるはず」という、顧客独自の「物差し」です。
これは個人の価値観に深く根ざしているため、最も見えにくく、かつ強力な期待値となります。
② 商品・サービスの金額
支払う対価に見合う質を求める心理です。
金額が高ければ高いほど、事前期待は「正確さ」だけでなく、「尊重されている実感」へとシフトしていきます。
私自身、現場を担当していた際に痛感しましたが、ディスカウントストアと百貨店では、発生するクレームの種類が全く異なりました。
安価な設定であれば「待ち時間」などの利便性への不満が主ですが、高価格帯になれば「大切に扱われていない」といった感情面への不満が圧倒的に増えるのです。
③ SNSや口コミ(外部からの情報)
現代において、事前期待を急激に押し上げているのがこの要素です。
実際、メディア露出が増えた店舗ほど「以前よりクレームが増えた」という切実な声をクライアント様から耳にします。画面上で切り取られた「完璧な一瞬」が、過剰な事前期待を形成してしまうからです。
ここで最も注意すべきは、「SNS上の理想」と「現場の現実」のズレです。
例えば、SNSの動画では店長が満面の笑みで対応をしているのに、いざ来店してみるとスタッフは真顔で事務的な対応しかしない。
あるいは、投稿写真では容器から溢れんばかりにボリューミーに盛り付けられていたお惣菜が、実際の商品ではスカスカで貧相に見えてしまう。
「情報の出し方」と「実際の提供」の乖離こそが、お客様に「裏切られた」という強い不快感を与えます。SNSで発信した以上、それと同等の対応や商品提供は最低限の義務となるのです。
3. チームで「お客様の心」を言語化する
研修では、ぜひ一度スタッフ同士で事前期待について話し合ってみることをお勧めしています。ここで挙がる内容は、店舗の地域性によって大きく異なります。
「私たちの店に来るお客様は、何を見て、どんな期待を持ってドアを開けているのか?」
「SNSで出した笑顔や商品のボリュームを、現場で再現できているだろうか?」
「自店の価格設定はこの地域でどう位置付けられているか?」
このように、従業員側のマインドとお客様の事前期待が合致しているか、差異が無いかを確認します。
これが事前期待を把握した上での接客のあり方を整え、「自分で考えるスタッフ」を育てる第一歩になります。
4. クレームを「期待」の再確認に変える
もし現場でクレームが起きてしまったら、二度と同じことを起こさないように反省だけではなく対策を練ることが不可欠です。
「この時、お客様の事前期待は何だったのか?」前述同様、この視点でクレーム内容を捉え直してください。お客様が何を望み、どこにズレを感じて声を上げられたのか。その本質が見えたとき、クレームは店とスタッフを成長させる貴重なヒントへと変わります。

5. おわりに
決められたマニュアルの動作、やり方をスタッフ全体へしっかりと落とし込むことも、大変な労力であると思います。もちろんそれだけでも接客はできている店、という評価を受けるでしょう。しかし、本当に良い接客、お客様が思わずお褒めの投書をするようなお店を作るには「作業」ではなく「期待に応えるプロフェッショナル」として、マーケティングの視点を持つことが肝要です。その徹底的な姿勢と誇りが、お客様に選ばれ続ける理由を作っていくのだと確信しています。
より詳しい接客指導、事前期待の考え方や顧客ニーズの切り出し、効率の良い集団研修についてはぜひご相談ください。
この記事を書いた人

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ヒトトセでは毎日利用する「街のお店の接客」に焦点を当てて
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