理学療法からみる「眠くならない研修」の作り方

いよいよ新入学・新社会人・新生活の4月がスタートしましたね!

なかにはアルバイトや新入社員として接客業のお仕事に就かれた方も多いと思います。今年度からは指導者・管理者になったという方も多いでしょう。得るものが多い接客業界、一緒に盛り上げていきましょう!!心機一転スタートの春、お仕事の初めには多くの方が同じように経験する「アレ」があります。それは・・・?

研修です。この瞬間にも対面・非対面・机上・実地で多岐に渡り開催されているでしょう。

そこでよく取りざたされるのが【研修中、受講者が眠くなる問題】です。

この記事をご覧になっている方々の中に講師として研修を行う方も沢山いることでしょう。百戦錬磨の方も若葉マークの方も、実りある研修の参考にして頂ければと思います。もちろん受講者側の「眠くならない対策」もピックアップしていきますよ!

そもそもなぜ研修中に眠くなるの?

学生時代、昼休みあとの日差しが柔らかな歴史の授業中につい…意識が……という経験がある方は少なくないと思います。

では受講者が睡魔に耐えられなくなってしまう要件、つまり問題点を挙げていきましょう。

講義自体の問題

・講義内容の質が低い

・講師のトークに抑揚やリアクションがない

・緊張感がない

受講者側の問題

・睡眠不足である

・食後であり、満腹または血糖値が下降している

・受講内容に興味を持てない

・集中力の壁

上記は一般的によく指摘される問題点です。単調でシンプルな講義形式では研修自体がリラックス効果を生み、
結果的に受講者が睡魔を催してしまいます。特筆すべきポイントとして受講者側が抱える問題点「集中力の壁」についてもう少し掘り下げましょう。

実は、人間がひとつの物事に対して集中して考えられる持続時間は4分半しかないと言われています。さらに16分に1回は目の前の課題とは別のことをぼんやり考える「マインドワンダリング」という状態になります。これは「心の迷走」や「モンキーマインド」とも呼ばれています。さらに30分経過すると血流が悪くなり始め、90分で知的集中力の限界がくるそうです。大学の講義が90分に設定されているのも、この集中力の限界が考慮されているのかもしれませんね…。

様々な要因を押しのけ、受講者が眠くならずに研修を受け続けるためにはどのようにすればよいのでしょうか…?

眠くならない研修とは何か

1 受講者が研修内容に対しメリットや充実感・発見を得られている
2 講師と受講者が共同で研修を作り上げている

研修という催しの目的がそもそも新しい知識や知見、ルールやスキルを習得する為の場であると考えると…

1で大切なことは、現在もしくはこれからの受講者の行う業務、また関わるビジネスと関連づけられるようにイメージしてもらうことが重要であり、2では受講者自身の経験や学んだことや感じたことを発言する機会を多くつくることが重要といえるでしょう。研修内容を自分事として置き換えて思考すると気づきや発見が生まれます。この気づきが脳を刺激します。脳が活性化しているということは、学んでいることに対して「なるほど」「そうなんだ」と心がワクワクしている状態になります。こうなると睡魔の介入する余地はありません。

ではもう少し具体的なテクニックを見ていきましょう。

こんな論文報告があります。豊橋創造大学保健医療学部にて、理学療法学科の学生の集中力を高める講義の要件、つまり学生を眠らせない講義要件とはなにかをしらべるために、基本情報、睡眠調査、授業中の眠気調査から構成される質問集を用いて実態調査が行われました。

学生は,寝不足,身体的疲労, 精神的疲労などの健康面と昼食後の授業や室温・湿度などが眠くなる大きな要因と考えている。基本統計量による結果は,学生 が考える眠気をもたらす要因,つまり主観的要因を示している。これには睡眠時間の短さが影響している。 (中略) したがって,学生は鉛筆を動かし,教員は学術的内容を充実させ,緊張感をもって授業を実施し,双方向コミュニケーションを 積極的に取り入れた授業展開が重要であることを再認識した。(学生の集中力を高める講義の要件とは 眠らせない講義 2015 第50回日本理学療法学術大会 抄録集 仙波 浩幸,清水 和彦 )

ここから情報をまとめると、研修主催側・講師側が措置を講じることができる要件は次の通りです。

眠らせない研修要件

1ノートやメモを取らせる

2充実した学術的内容を盛り込む

3緊張感を持たせる

4会話・対話などのコミュニケーションを取り入れる

人は手を動かして字をかくことにより記憶へ定着させやすくしています。またメモはある程度情報を整理する必要があるため、必然的に情報を自身に落とし込むことになります。そして講義の内容は学術講義以外であっても、様々な学術的知見や見解を取り入れることで人の知的好奇心を刺激できます。

また研修時には適度な緊張感が必要です。重要なテキストを音読してもらうことや、指名して発言を求める、時間制限を設けたワークを行うなどが適しています。
そして最も眠気を防止するのがコミュニケーションです。グループワークやロールプレイングは睡魔の入る余地がありません。発表や成果物が発生することで受講者の満足感・充足感にもつながります。

他にもある!集中力を高める色彩

こんな研究もあります。色彩環境が学習活動にもたらす影響を調べた分析結果です。

PC 教室を対象とした学習空間の色彩について調査が行われました。その結果によれば壁・床・机などの視野に入る環境色において、とりわけ知識・技能の習得を主な目的とする学習に適している色彩環境は、「ダークブルー」「ライトブルー」 であることが確認されました。

従来,青色の心理的効果は集 中力を高め作業効率をアップすると言われているが,矛 盾しない結果である。中でもダークブルーは目に与える 刺激が少なく,落ち着いた印象を与えるため,一つのことに集中する学習に適していると考えられる。(色彩環境が学習活動にもたらす影響 ―学習空間と用紙の色彩について― 木下 夢菜*・古本奈奈代**徳島文理大学研究紀要 第 105 号 令和 5.3)

これはスライドやパワーポイント資料、カーテンなどの環境に取り入れることで効果を得られやすいでしょう。

研修内容が創造性を重視する分野であればライトレッドやライトイエローなどの明度が高い有彩色が適しているそうです。テスト用紙の色としてはミス率が最も低く正答率が高い色がホワイトであることが分かったそうです。研修内容によっては用紙の色などで受講者の意識を手助けすることができるかもしれませんね。

反対に受講者側ができる対策は次の通りです。

研修で寝落ちしないための対策

1睡眠はしっかりとっておく

2率先的にメモをとり、研修内容を自分事として置き換える

3昼食をはさむ場合は沢山食べすぎず、緑茶・紅茶・コーヒーなどのカフェインを取る

あまりにも基本的なことばかりですが、この睡眠をしっかりとっておくことは非常に重要です。睡眠が与える効果、集中力やうつ、抑うつなどのメンタルに関する影響についてはまたの機会に詳しくひも解いていきましょう。

たとえ講義内容が平坦で新鮮味がなかったとしても、内容をしっかりと自分事に置き換え、メモを取ることが大事です。

まとめ

研修を開催する時にはスライド資料にダークブルーライトブルーを配色し、学術的なネタを15分に一回は得られるように盛り込み、あらかじめ指示してノートを取らせ、受講者を指名して発言してもらう機会をつくり、グループワークなどを通してコミュニケーションをはかると良いということです。また受講者側は最低限前日の夜は遊んだりスマホを眺めていないで睡眠をとりましょう。

研修はその内容がいかに重要であっても、やり方や環境によっては受講者が眠くなってしまいます。ただ漫然と講義形式で進めるのではなく、脳と体を刺激しながら講師と受講者が一緒になって学びや知識を楽しむ場になるとよいですね!

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この記事を書いた人

ヒトトセ編集室 A
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